目標 設定したものの、達成できなかった…」

マーケターとして、あるいは事業責任者として、この言葉の重みに胸が締め付けられるような経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。綿密に練り上げたはずの計画が、なぜか実を結ばない。振り返っても、一体何が間違っていたのか判然としない。その悔しさと焦りが、次の一歩を鈍らせてしまう…。

こんにちは。株式会社サードパーティートラストで、20年にわたりウェブ解析に携わっているアナリストです。これまでECサイトからBtoB、メディアまで、数えきれないほどの「Webサイトの課題」と向き合ってきました。そして、その中で何度も「目標設定が達成できなかった」という現場の苦悩に立ち会ってきました。

ですが、断言します。目標が達成できなかったという事実は、決して「失敗」ではありません。それは、あなたのビジネスにとって最も正直で、価値のある「ユーザーからのフィードバック」なのです。この記事では、その貴重なフィードバックをどう読み解き、次なる成功の糧に変えていくのか。私たちの哲学と経験のすべてを注ぎ込み、その道筋を具体的にお話しします。

なぜ、あなたの目標は「絵に描いた餅」で終わってしまうのか?

そもそも、なぜ私たちは目標を設定するのでしょうか。それは、ビジネスという航海の目的地を定め、進むべき方向を指し示すためです。Web分析は、その航海を支える羅針盤や海図の役割を果たします。

ハワイの風景

この航海で最も重要なのが、最終目的地である「KGI(Key Goal Indicator)」と、そこへ至るための中間地点である「KPI(Key Performance Indicator)」の設計です。

これを登山に例えるなら、KGIは「山頂への到達」。そしてKPIは「五合目」「八合目」といったチェックポイントであり、そこへ向かうための「歩数」や「消費カロリー」といった日々の活動指標です。山頂という壮大なゴールだけを見つめていても、今どこにいて、どちらへ一歩を踏み出せばいいのか分からなくなってしまいますよね。

「アクセス数を増やす」といった漠然とした目標では、この登山計画は成り立ちません。しかし、「3ヶ月で特定記事からのセミナー申込数を20件にする」という具体的なKPIがあれば、どの登山ルート(コンテンツ)を整備し、どんな装備(広告やUI)を整えるべきか、データに基づいて判断できるようになるのです。

目標が達成できなかった時、多くの人は「もっと頑張るべきだった」と精神論に陥りがちです。しかし、本当に見直すべきは、この「登山計画そのもの」に潜む構造的な問題なのです。

達成できない目標に共通する「3つの罠」

20年の経験で気づいたのは、目標達成を阻む要因には、驚くほど共通したパターンがあるということです。それは個人の能力や努力の問題ではなく、多くの組織が陥りがちな「罠」と言えるものです。

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罠1:教科書通りの「正しい目標」という名の罠

目標設定のフレームワークとして有名な「SMART原則」。具体的で(Specific)、測定可能で(Measurable)、達成可能で(Achievable)、関連性があり(Relevant)、期限が明確(Time-bound)な目標を立てる、というものです。もちろん、これは非常に有効なツールです。

しかし、この原則に忠実であろうとするあまり、かえって現実から乖離してしまうケースを、私は嫌というほど見てきました。特に危険なのが「Achievable(達成可能)」と「Relevant(関連性)」の解釈です。

かつて、あるクライアントの担当者から「理想的には正しいのですが、うちの会社では現実的に無理なんです」と打ち明けられたことがあります。当時の私は、データ上の「正論」を振りかざし、コストのかかるシステム改修を提案し続けていました。しかし、その会社には年単位で動く固い予算文化があり、私の提案は「絵に描いた餅」でしかありませんでした。これは、顧客の組織文化や実行体制という「現実」を無視した、アナリストの自己満足に他なりませんでした。

SMART原則は万能薬ではありません。あなたの会社の予算、メンバーのスキル、そして組織文化。そういった生々しい現実と向き合って初めて、本当に「達成可能」で「関連性のある」目標が生まれるのです。

罠2:「美しすぎる指標」という名の罠

次に陥りがちなのが、KPI設計の誤りです。特に、データリテラシーが高いチームほど、「高度で、誰も思いつかないような美しいKPI」を設定したくなる誘惑に駆られます。

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私自身、過去に大きな失敗をしました。ページ単位の分析に限界を感じ、重要なページ遷移だけを可視化する「マイルストーン分析」という画期的な手法を開発したときのことです。私自身は「これで本質が見える!」と興奮しましたが、導入先のクライアントでは、そのデータの価値や活用法を社内に説明できる人が担当者しかいませんでした。

結果として、その画期的なレポートはほとんど活用されず、誰でも一目でわかるシンプルなレポートの方がよほど価値があったかもしれない、と痛感させられました。データは、それ自体が価値を持つわけではありません。受け手が理解し、行動に移せて初めて価値が生まれます。

あなたの設定したKPIは、会議室にいる役員や、現場の担当者、誰もが「なるほど、この数字を追いかければいいんだな」と直感的に理解できるものになっているでしょうか?

罠3:「焦り」という名の罠

「早く結果を出さなければ…」その焦りが、すべてを台無しにすることがあります。特に新しい施策を始めた直後や、GA4のような新しいツールを導入したばかりの時期は危険です。

これも私の苦い経験談です。あるクライアントからデータ活用を急かされ、営業的なプレッシャーも感じる中で、データ蓄積が不十分と知りつつ、不正確なデータに基づいた提案をしてしまったことがあります。しかし翌月、十分なデータが蓄積されると、前月の数値はTVCMによる一時的な異常値だったことが判明。全く違う傾向が見えてきたのです。この一件で、私はクライアントの信頼を大きく損ないました。

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データアナリストは、時にクライアントの期待や社内の都合といったノイズから、データを守る「防波堤」にならなければなりません。不確かなデータで語るくらいなら、沈黙を選ぶ。正しい判断のためには「待つ勇気」が不可欠です。目標が達成できなかったとしても、焦って次の手を打つ前に、まずは「データが十分に語り始めるまで待つ」という視点を持ってみてください。

データから導く、目標達成への「最短ルート」

では、これらの罠を回避し、次こそ目標を達成するためには、具体的に何をすれば良いのでしょうか。私たちが最も重視しているのは、「できるだけコストが低く、改善幅が大きいものから優先的に実行する」という原則です。派手なリニューアルや高額なツール導入の前に、できることは山ほどあります。

「簡単な施策ほど正義」と心得る

アナリストは見栄えの良い提案をしたくなるものですが、ユーザーにとって重要なのは見た目より情報そのものです。あるメディアサイトで、記事からサービスサイトへの遷移率が、どんなに美しいバナーを作っても低いままでした。そこで私たちは、見栄えを一切捨て、記事の文脈に合わせたごく自然な「テキストリンク」への変更を提案しました。

結果、遷移率は0.1%から1.5%へと15倍に向上。「リンクをテキストに」という、あまりに地味な施策が、最も効果的だったのです。あなたのサイトにも、このような「簡単だけど見過ごされている改善点」が眠っているはずです。

ABテストは「大胆かつシンプル」に

多くのABテストが「よく分からなかった」で終わるのは、比較要素が多すぎたり、差が小さすぎたりするからです。無意味な検証はリソースの無駄でしかありません。

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ABテストの目的は、次に進むべき道を明確にすること。そのためには、迷いを断ち切る「大胆でシンプルな問い」を立てることが最も重要です。例えば、「信頼感のある固いコピー」と「親しみやすい砕けたコピー」では、どちらがクリックされるのか。比較要素を一つに絞り、固定観念に囚われず、大胆な差で検証する。これにより、検証期間は短縮され、勝ちパターンが明確になり、次の施策のアイデアも生まれやすくなります。

行動の裏にある「ユーザーの内心」を捉える

Google Analyticsなどのアクセス解析ツールでわかるのは、あくまで「ユーザーが何をしたか」という行動データです。しかし、ビジネスを本当に改善するためには、「ユーザーが“なぜ”そうしたのか」という内心を知る必要があります。

私たちはこの壁を越えるため、サイト内の行動履歴に応じてアンケートを出し分けるツールを自社開発しました。例えば、料金ページを熟読したのに離脱したユーザーにだけ「何が決め手となりませんでしたか?」と尋ねる。これにより、「家族構成」や「他社との比較状況」といった、ビジネスに直結する定性データを、定量データと掛け合わせて分析できるようになり、戦略の精度が飛躍的に向上しました。

Web解析はマーケティングの一部でしかありません。行動の裏にあるユーザーの心に寄り添う視点が、次のブレークスルーを生むのです。

「達成できなかった」から始める、明日への最初の一歩

ここまで読んでくださったあなたは、きっと「目標設定 達成できなかった」という経験を、次なる成長の機会に変えたいと強く願っているはずです。

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そのために、明日からできる最初の一歩。それは、「達成できなかった目標」と「その結果のデータ」を、失敗の証拠としてではなく、最も信頼できる「羅針盤」として見つめ直すことです。

ぜひ、あなたのチームで以下の問いについて話し合ってみてください。

  • 【目標の再検証】設定した目標(KGI/KPI)は、今の組織体制や予算で本当に「達成可能」なものだったか?
  • 【指標の再検証】そのKPIは、データに詳しくないメンバーでも「自分の仕事との関わり」を理解できる、シンプルな指標だったか?
  • 【分析の再検証】判断の根拠としたデータは、十分に蓄積された「確かな声」だったか?焦りから結論を急いでいなかったか?
  • 【施策の再検証】デザイン変更や機能追加の前に、もっと簡単で、コストをかけずに試せる施策はなかったか?

これらの問いに一つずつ向き合っていくことで、これまで見えていなかった課題の本質が、きっと浮かび上がってくるはずです。

しかし、自社のこととなると、客観的な視点を保つのは難しいもの。もし、この航海図の読み解きに迷ったり、どこから手をつければいいか分からなくなったりした時は、私たちのような外部の専門家を頼るのも一つの有効な手段です。

株式会社サードパーティートラストは、15年以上にわたり、データという「人の内心」に寄り添い続けてきました。もしあなたが本気で現状を打破したいと願うなら、ぜひ一度、あなたのビジネスが描く航海図を私たちにも見せてください。共に悩み、考え、次こそ「目標達成」という山頂にたどり着くための最短ルートを、一緒に見つけ出しましょう。

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まずはお気軽に、私たちの無料相談をご活用ください。あなたからのご連絡を、心よりお待ちしております。

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