サイト内検索は「宝の山」。GA4で顧客の心の声を読み解き、ビジネスを動かす分析術
こんにちは。株式会社サードパーティートラストでWEBアナリストを務めております。かれこれ20年、ECサイトからBtoB、メディアまで、様々なウェブサイトの課題をデータと共に解決してきました。
突然ですが、あなたは自社のサイト内検索のデータを、本当に活用できているでしょうか。「検索キーワードの一覧は眺めているけれど、そこから何をすればいいのか分からない…」「そもそも、どこをどう見ればいいのか…」そんな風に、目の前にある宝の山の活かし方に悩んでいませんか?
サイト内検索のログは、単なる文字列のリストではありません。それは、あなたのサイトを訪れたユーザーが、自らの言葉で語りかけてくれる「心の声」そのものです。購買意欲や問題解決意欲の高いユーザーが、わざわざ打ち込んでくれた、これ以上ないほど率直なニーズなのです。
この記事では、GA4(Googleアナリティクス4)を使って、その貴重な「心の声」をどう読み解き、具体的なビジネス改善に繋げていくのか、私の20年の経験から導き出した実践的な方法を余すところなくお伝えします。小手先のテクニックではなく、ビジネスの根幹を動かすためのデータ分析の本質に、一緒に迫っていきましょう。
なぜ「サイト内検索 分析」がビジネスの羅針盤になるのか?
私が常々お伝えしているのは、「データは、人の内心が可視化されたものである」ということです。そして、サイト内検索のデータほど、この言葉がしっくりくるものはありません。

ユーザーは、何か目的があってあなたのサイトを訪れます。メニューをたどり、リンクをクリックし、それでも見つからない時、最後の望みを託すのが「検索窓」です。そこに打ち込まれる言葉には、ユーザーの「知りたい」「解決したい」「買いたい」という切実な想いが凝縮されています。
以前、あるクライアント企業で、サイト内検索データを分析した時のことです。「〇〇 使い方」というキーワードでの検索が非常に多いにもかかわらず、検索後の離脱率が異常に高い、という事実が浮かび上がりました。これは典型的な「ユーザーが求めている情報が見つからず、諦めて帰ってしまっている」状態です。
私たちはすぐに、使い方を解説するコンテンツを拡充し、検索結果からそのページへスムーズに誘導する動線を設計しました。結果は明白で、コンバージョン率が15%も向上し、カスタマーサポートへの問い合わせも減少したのです。これは、ユーザーの「心の声」に真摯に耳を傾け、的確に応えられたからに他なりません。
このように、サイト内検索 分析は、単なるサイト改善に留まらず、商品開発のヒントや、マーケティング 戦略の見直し、さらには顧客満足度の向上にまで繋がる、まさにビジネス全体の羅針盤となり得るのです。
GA4での分析を始める前に:正しい「下ごしらえ」が成果を分ける
さて、GA4で分析を始める前に、一つだけ重要な準備についてお話しさせてください。料理で言えば「下ごしらえ」の部分です。どんなに優れたレシピ(分析手法)があっても、素材(データ)が正しくなければ、美味しい料理は作れません。

GA4は非常に優秀で、多くのサイトで自動的にサイト内検索のキーワードを収集してくれます。しかし、サイトの作りによっては、この設定がうまく機能していないケースも少なくありません。まずは、GA4の管理画面で、自社のサイト内検索データが正しく計測されているかを確認してください。
具体的には、「管理」→「データストリーム」→(対象のストリームを選択)→「拡張計測機能」の設定(歯車アイコン)から、「サイト内検索」がオンになっているか、そして必要に応じて検索クエリパラメータが正しく指定されているかを確認します。
この「下ごしらえ」を怠ったために、貴重なデータを取りこぼしていた、というケースは本当によくあります。私が過去に担当したあるクライアントも、まさにこの状態でした。設定を正しく修正してからデータを見直すと、それまで見えていなかったユーザーのニーズが次々と明らかになり、サイト改善の方向性が一気に明確になりました。
ほんの数分の確認作業が、この先の分析の質を大きく左右します。ぜひ、本腰を入れる前にチェックしてみてください。
GA4で宝の地図を読み解く3つのステップ
正しいデータが取れるようになったら、いよいよ宝探し(分析)の始まりです。GA4を使って、ユーザーのインサイトという宝物を見つけ出すための、実践的な3つのステップをご紹介します。これは、私が普段クライアントに提案している分析フローそのものです。

ステップ1:まずは「全体像」を把握する(探索レポートの活用)
最初に行うのは、森全体を眺めることです。GA4の「探索」機能を使い、基本的なレポートを作成して、サイト内検索の全体像を掴みましょう。
見るべき指標はシンプルです。
- 検索キーワード(search_term):どんな言葉で検索されているか?
- ユーザー数:どれくらいの人が検索しているか?
- セッションあたりのイベント数:検索後、どれくらいサイト内を回遊しているか?
- コンバージョン数:検索から成果に繋がっているか?
ここで重要なのは、数字をただ眺めて終わらないことです。これは健康診断の結果と同じ。数値を見て「なるほど」で終わっては意味がありません。その数値が「何を物語っているのか」を考えることが、アナリストの仕事の第一歩です。
例えば、「検索数は多いのに、コンバージョンがゼロのキーワード」はありませんか?それは、高いニーズがあるにも関わらず、サイトが全く応えられていないという、非常にもったいない機会損失のサインです。
ステップ2:「なぜ?」を深掘りする(キーワードごとのインサイト発見)
全体像が見えたら、次は個別のキーワードに焦点を当て、ユーザーの「なぜ?」を深掘りしていきます。ここが分析の最も面白い部分です。

【見るべきポイント1:検索結果ゼロのキーワード】
私が特に注目するのは、「検索結果が1件も表示されなかったキーワード」です。GA4の標準機能では直接見つけにくいですが、BigQueryなどと連携すれば分析可能です。なぜなら、これは「ユーザーが期待したのに、サイトには存在しなかった情報」のリストだからです。商品名の揺らぎ(ひらがな、カタカナ、漢字)、専門用語、あるいはまだ取り扱いのない商品やサービス…。これらはすべて、コンテンツ拡充や品揃えの絶好のヒントになります。
【見るべきポイント2:検索後の行動】
次に、特定のキーワードで検索したユーザーが、その後「どのページに遷移し」「最終的にコンバージョンしたのか、あるいは離脱したのか」を追跡します。GA4の「経路データ探索」を使えば、この動きを可視化できます。
「料金」と検索したユーザーが、料金ページを見た後に離脱しているなら、料金体系が分かりにくいのかもしれません。「〇〇 評判」と検索したユーザーが、導入事例ページにたどり着いていないなら、検索結果からの導線に問題がある可能性があります。
このように、キーワードと行動をセットで見ることで、ユーザーが何につまずいているのか、その解像度が一気に上がります。
ステップ3:ユーザー像を明確にする(セグメント 分析)
最後のステップは、ユーザーをグループ分けして比較する「セグメント分析」です。すべてのユーザーをひとまとめにして見るのではなく、「誰が」検索しているのかを明らかにします。

例えば、以下のような切り口が考えられます。
- 新規ユーザー vs リピーター:初めて来た人と、常連さんとでは、求める情報が違います。新規ユーザーは「〇〇とは?」といった基本的な情報を、リピーターは「〇〇 連携方法」といった具体的な使い方を探しているかもしれません。
- デバイス(PC vs スマホ):移動中にスマホで検索する人と、オフィスでPCから検索する人では、検索の意図や緊急度が異なる場合があります。
- 流入元(広告経由 vs 自然検索):広告のメッセージに惹かれて来た人と、自ら課題を検索して来た人とでは、サイト内での行動も変わってきます。
以前、あるBtoBサービスのサイトでこの分析を行ったところ、リピーター、特に「パートナー企業」と思われるユーザー群が、特定の技術資料を繰り返し検索していることが分かりました。そこで、パートナー専用のポータルサイトへの導線を検索結果画面に設置したところ、業務効率が上がったと大変喜ばれ、結果的にサービスの継続率向上にも貢献できました。
このようにセグメントを切ることで、「誰に」「何を」届けるべきか、というマーケティングの基本に立ち返ることができるのです。
分析で終わらせない。ビジネスを動かすための「次の一手」
さて、ここまで分析手法をお伝えしてきましたが、最も重要なことをお伝えします。それは、「分析は、ビジネスを改善して初めて価値を持つ」ということです。綺麗なレポートを作って満足していては、何も変わりません。
サイト内検索の分析から見えてくる改善策は、多岐にわたります。

- コンテンツの改善・追加:検索されているのに存在しない情報や、説明が不十分な内容を拡充する。
- サイト内導線の改善:検索結果ページから、ユーザーが求める情報へスムーズにたどり着けるようにリンクを最適化する。
- 商品・サービスの改善:「壊れやすい」「使いにくい」といった検索キーワードは、製品開発への貴重なフィードバックです。
- マーケティング施策への反映:よく検索されるキーワードを、広告のキーワードやLPのキャッチコピーに活用する。
ここで思い出してほしいのが、私の信条の一つである「簡単な施策ほど正義」という考え方です。大規模なサイトリニューアルを考える前に、できることはたくさんあります。例えば、検索結果に表示される文言を少し変える、関連性の高い記事へのテキストリンクを1本追加する。そんな地味に見える施策が、劇的な効果を生むことを、私は何度も見てきました。
大切なのは、分析で見つかった課題に対して、コストや実現可能性を考慮しながら、優先順位をつけて実行し、その結果をまたデータで検証する、というサイクルを回し続けることです。
分析のプロとして、私たちが約束できること
サイト内検索の分析は、やり始めると非常に奥が深く、時には「このデータは何を意味しているんだ…?」と迷子になってしまうこともあるかもしれません。
特に、分析から施策に繋げる部分には、経験とノウハウが求められます。過去には私も、データが十分に蓄積されるのを待てずに焦って提案し、クライアントの信頼を損ねてしまった苦い経験があります。データアナリストは、ノイズからデータを守り、誠実にその声に耳を傾ける「待つ勇気」も必要なのです。
もし、あなたが「自社のサイト内検索データを深く分析し、本気でビジネスを改善したい」とお考えなら、ぜひ一度、私たちにご相談ください。私たちは単なるデータの分析屋ではありません。15年間、一貫して「データからユーザーの内心を読み解き、ビジネスを改善する」ことだけを追求してきた、実践派のプロフェッショナル集団です。

あなたのサイトに眠る「宝の地図」を、私たちと一緒に読み解いてみませんか?
まずは明日からできる最初の一歩として、あなたのサイトで最も検索されているキーワードTop10と、もし可能であれば「検索結果ゼロ件」のキーワードをリストアップしてみてください。そこから、きっと新しい発見があるはずです。その発見の意味を深く知りたいと思った時、いつでも私たちにお声がけください。