あなたのビジネスを動かす、マーケティング 分析の種類と「正しい選び方」

マーケティング分析が重要と聞くけれど、種類が多すぎて、結局何から手を付ければいいんだろう?」

マーケティングの現場で、あるいは経営の舵取りをしながら、そんな風に感じていらっしゃる方は少なくないはずです。目の前には膨大なデータ。しかし、どこから読み解けばいいのか分からず、時間だけが過ぎていく。これでは、せっかくのデータも宝の持ち腐れです。

こんにちは。株式会社サードパーティートラストでアナリストを務めております。私は20年間、ECサイトからBtoB、大手メディアまで、あらゆる業界でデータと向き合い、数々の事業の立て直しをご支援してきました。

私たちの信条は、創業以来15年間、一貫して変わらず「データは、人の内心が可視化されたものである」ということです。この記事では、単なる分析手法のカタログをお見せするつもりはありません。20年の経験から見えてきた、あなたのビジネスを本当に前進させるための「マーケティング分析の種類の選び方」と、その活用の勘所について、余すところなくお話しします。この記事を読み終える頃には、きっとあなたのビジネスの羅針盤が見つかっているはずです。

なぜ、ただ知るだけではダメなのか?分析の種類を選ぶ「視点」の重要性

データドリブン」という言葉が浸透し、多くの企業が何らかのデータを追いかけています。しかし、私が現場で見てきた中で、本当の意味でデータを活用できている企業は、残念ながらそう多くはありません。

ハワイの風景

なぜでしょうか? それは、多くのケースで「目的」と「手段」が入れ替わってしまっているからです。マーケティング分析には様々な種類がありますが、それはあくまで道具箱に入ったツールに過ぎません。大切なのは、「何を達成するために、どの道具を使うのか?」という視点です。

これは、料理に似ています。どんなに高級な包丁や鍋を持っていても、何を作りたいか(=目的)が決まっていなければ、ただの置物になってしまいますよね。「カレーを作る」という目的があるからこそ、「野菜を切るために包丁を、煮込むために鍋を」と、適切な道具を選べるのです。

マーケティング分析も全く同じです。「顧客にもっと商品を買ってほしい」のか、「ブランドのファンを増やしたい」のか、「広告の費用対効果を改善したい」のか。あなたのビジネスが今、どこへ向かおうとしているのか。その目的によって、選ぶべき分析の種類は全く変わってきます。

やみくもにデータを眺めても、答えは見つかりません。まずは「目的」という名のレシピを明確にすること。それが、データという最高の食材を活かすための、最初の、そして最も重要な一歩なのです。

【目的別】あなたの課題を解決するマーケティング分析の種類

さて、ここからは具体的な分析の種類を、あなたのビジネスにおける「目的」別に整理してご紹介します。広大な海原を航海するように、ご自身の目的に合った分析手法という羅針盤を見つけてみてください。

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1. お客様のことをもっと深く知りたい:顧客理解のための分析

すべてのビジネスの原点は、お客様を理解することにあります。お客様が何を考え、どう行動しているのか。その「内心」をデータから読み解くための分析です。

  • アクセスログ分析: あなたのWebサイトという「お店」で、お客様がどんな通路を通り、どの商品棚で足を止め、何に興味を示しているのかを観察します。どのページで離脱が多いのか、どのコンテンツがよく読まれているのかを知る、最も基本的な分析です。
  • 顧客セグメンテーション分析: お客様を画一的な「集団」として見るのではなく、「初めて来た人」「何度も来てくれる常連さん」「特定の商品に興味がある人」など、共通の興味や行動を持つグループ(セグメント)に分けます。これにより、それぞれのグループに合わせた最適なアプローチが可能になります。
  • サイト内アンケート分析: アクセスログだけでは「行動(What)」は分かっても、「理由(Why)」は分かりません。そこで私たちは、特定の行動を取ったユーザーに「なぜこのページに来たのですか?」「探している情報は見つかりましたか?」と直接尋ねるアンケートツールを自社開発しました。行動データ(定量)と、お客様の声(定性)を掛け合わせることで、ユーザーの内心をより立体的に捉えることができます。

2. 施策の効果を正しく測り、改善したい:効果測定のための分析

投下したコストや労力が、きちんと成果に結びついているか。それを客観的に評価し、次の一手を考えるための分析です。

  • コンバージョン分析: あなたが設定したゴール(商品購入、問い合わせ、資料請求など)が、どれだけ達成されているかを測定します。これは、いわばビジネスの健康診断のようなものです。
  • 広告効果測定(CPA/ROAS分析): 投下した広告費に対して、どれだけのリターンがあったのかを測る指標です。CPA(顧客獲得単価)やROAS(広告費用 対効果)を分析することで、どの広告に予算を集中させるべきか、あるいはどの広告を停止すべきか、データに基づいた判断が下せるようになります。
  • アトリビューション分析: お客様がゴール(コンバージョン)に至るまでには、様々な広告やコンテンツに触れています。アトリビューション 分析は、サッカーでゴールが決まった時に、シュートを決めた選手だけでなく、その前にパスを出した選手も評価するように、「最終的な成果に、どの接点がどれだけ貢献したか」を分析する手法です。これを怠ると、実は見込み顧客の育成に貢献していた重要な広告を、成果が出ていないと誤解して止めてしまう、といった過ちを犯しかねません。

3. 市場やライバルの動きを知りたい:環境把握のための分析

ビジネスは自社だけで完結するものではありません。市場の風向きを読み、競合という船の動きを把握することも、航海には不可欠です。

  • 競合分析: ライバル企業のWebサイトの作りや、どんなキーワードで集客しているのか、どんな広告を出しているのかを調査します。相手の強みと弱みを知ることで、自社が取るべき差別化戦略が見えてきます。
  • トレンド分析: GoogleトレンドやSNS上の話題(ソーシャルリスニング)を分析し、世の中の興味・関心が今どこに向かっているのかを把握します。新しいビジネスチャンスの発見や、季節性の需要予測などに役立ちます。

成功の鍵と、誰もが陥る「落とし穴」:20年の経験から語る真実

様々な分析の種類をご紹介しましたが、ツールや手法を導入するだけでは成功は約束されません。私自身も、この20年で数多くの成功と、それと同じくらいの失敗を経験してきました。ここでは、その経験から得た「成功の鍵」と、多くの人が陥りがちな「落とし穴」についてお話しします。

成功への近道:「簡単な施策ほど正義」と心得る

アナリストは、つい複雑で高度な分析や、見栄えのする改善案を提案したくなるものです。しかし、本当にビジネスを動かすのは、地味でも本質的な施策であることが少なくありません。

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以前、あるメディアサイトで、記事からサービスサイトへの遷移率がどうしても上がらない、という課題がありました。担当者の方は、何度もバナーデザインをリッチなものに変更していましたが、結果は芳しくありません。私はそこで、見栄えの良いバナーを全てやめて、記事の文脈に合わせたごく自然な「テキストリンク」に変えることを提案しました。結果は劇的でした。遷移率は0.1%から1.5%へ、実に15倍に向上したのです。

大切なのは、常に「最も早く、安く、簡単に実行できて、効果が大きい施策は何か?」という視点を持つことです。派手さはありませんが、こうしたコストが低く改善幅が大きい施策から優先的に実行することこそ、成功への一番の近道だと私は信じています。

陥りがちな3つの「落とし穴」

一方で、良かれと思ってやったことが裏目に出てしまうケースも後を絶ちません。特に注意すべき3つの落とし穴があります。

  1. 落とし穴1:データを急ぎ、信頼を失う
    かつて、新しい計測設定を導入したばかりのクライアントから、早く成果を出してほしいと強く期待されたことがありました。私はそのプレッシャーに負け、データ蓄積が不十分と知りながら、不正確なデータで提案をしてしまったのです。しかし翌月、十分なデータが溜まると、全く違う傾向が見えてきました。前月のデータは、TVCMによる一時的な異常値に過ぎなかったのです。この一件で、私はクライアントの信頼を大きく損ないました。データアナリストは、不確かなデータで語るくらいなら、沈黙を選ぶ「待つ勇気」が不可欠です。
  2. 落とし穴2:自己満足な「正論」を振りかざす
    あるクライアントサイトで、コンバージョンフォームに明らかな課題がありました。しかし、その管轄は別部署で、組織的な抵抗が予想されたため、私はその根本的な課題への言及を避けてしまいました。結果、1年経っても本質的な改善はなされず、機会損失が続きました。逆に、別のクライアントでは、相手の予算や体制を無視して「理想論」ばかりを提案し続け、何も実行されなかった苦い経験もあります。相手の現実を深く理解した上で、しかし「避けては通れない課題」は伝え続ける。このバランス感覚こそが、アナリストに求められる資質です。
  3. 落とし穴3:分析が「伝わらない」
    画期的な分析手法を開発し、クライアントに導入した時のことです。私自身はその分析の価値を確信していましたが、導入先の担当者以外のデータリテラシーが低く、その価値や活用法を社内に説明できませんでした。結果、その素晴らしい分析は誰にも使われることなく、お蔵入りに。データは、受け手が理解し、行動に移せて初めて価値が生まれます。常に相手のレベルに合わせ、「確実に伝わり、使われるデータ」を設計しなければなりません。

まとめ:データという羅針盤を手に、明日から踏み出す最初の一歩

ここまで、マーケティング分析の種類とその選び方、そして成功のためのヒントと注意点についてお話ししてきました。データ分析は、あなたのビジネスを成長させるための、間違いなく強力な武器になります。

しかし、この記事でたくさんの種類を紹介しましたが、最初から全てをやる必要は全くありません。むしろ、一度に手を広げすぎると、かえって混乱してしまいます。

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では、明日から何ができるか。最初の一歩をご提案します。

まずは、Google Analyticsを開いてみてください。そして、「あなたのサイトの最終ゴール(商品購入完了ページや問い合わせ完了ページ)はどこか?」、そして「その一つ手前のページはどこか?」の2点だけを確認してみてください。多くのユーザーが、どこから来て、どこでゴールを諦めてしまっているのか。そこに、あなたのビジネスを改善する物語の、最初のヒントが隠されているはずです。

その数字の裏にあるお客様の感情や行動を読み解き、ストーリーとして語ること。それが私たちの仕事です。もし、あなたがその物語の読み解きに迷ったり、次の一手に悩んだりした時は、いつでも私たちにご相談ください。20年間データと向き合い続けた経験を元に、あなたのビジネスという航海を成功に導く、最適な羅針盤を一緒に見つけさせていただきます。

さあ、今こそデータ分析の力を解き放ち、あなたのビジネスを次のステージへと飛躍させましょう。

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