伝わるデータは、ビジネスを動かす。プロが選ぶインフォグラフィックス事例と実践法
「報告書を作っても『で、結局何が言いたいの?』と言われてしまう」
「データは山ほどあるのに、次のアクションに繋がらない」
もし、あなたがこのような壁に突き当たっているのなら、それはあなただけのせいではありません。多くの真面目なビジネスパーソンが、同じ悩みを抱えています。こんにちは、株式会社サードパーティートラストでアナリストを務めております。私は20年間、ECからBtoBまで、あらゆる業界でデータと向き合い、数々の事業を立て直すお手伝いをしてきました。
私たちが創業以来、一貫して信じていることがあります。それは「データは、人の内心が可視化されたものである」ということ。数字の羅列の向こう側には、必ず顧客の喜びや悩み、あるいはビジネスのボトルネックといった「生きた物語」が隠されています。
この記事では、単なる「インフォグラフィックス 例」の紹介に留まりません。データに隠された物語を解き明かし、人を動かし、最終的にビジネスを改善するための「考え方」と「具体的な技術」を、私の経験を交えながらお伝えしていきます。この記事を読み終える頃には、あなたはデータを見る目が変わり、明日からの仕事に活かせる確かなヒントを手にしているはずです。
そもそもインフォグラフィックスとは?単なる「図解」との決定的な違い
インフォグラフィックスという言葉を、単に「情報を分かりやすく図にしたもの」と捉えているとしたら、それは少しもったいないかもしれません。私にとってインフォグラフィックスとは、情報を絵にすることではありません。それは、データに隠された『物語』を語り、意思決定を促すためのコミュニケーション技術です。

例えば、あなたがレストランのシェフだとします。最高の食材(データ)を集めても、それをただ皿に並べただけでは、お客様を感動させる一皿にはなりませんよね。どの食材を組み合わせ、どんな順番で味わってもらうか、その「レシピ」と「盛り付け」があって初めて、食材の価値が最大限に引き出されます。
インフォグラフィックスも同じです。目的というレシピに基づき、データという食材を調理し、見る人の心に「なるほど!」という発見と、「こうしよう!」という行動をもたらす。そこまで設計されて初めて、それは真のインフォグラフィックスと呼べるのです。
私たちが目指すのは、見た目が美しいだけの「飾り」ではありません。ビジネスという航海の羅針盤として機能し、チームを同じ目的地へと導く、実用的なツールとしてのインフォグラフィックスです。
成功事例から学ぶ「伝わる」インフォグラフィックスの本質
「言うは易し、行うは難し」ですよね。では、実際にビジネスを動かした「インフォグラフィックス 例」には、どのような本質が隠されているのでしょうか。私の経験から、特に印象的だった2つの事例をご紹介します。
事例1:デザインより「文脈」。たった1行のテキストリンクがCVRを15倍にした話
あるメディアサイトで、記事からサービスサイトへの遷移率が、長年の課題でした。担当者の方は、何度もバナーのデザインをABテストし、リッチなクリエイティブをとっかえひっかえしていました。しかし、遷移率は0.1%から一向に改善しませんでした。

私はデータを見て、ユーザーはバナーを「広告」として無意識に無視しているのではないか、と仮説を立てました。そこで提案したのは、拍子抜けするほど簡単な施策です。派手なバナーをすべて撤去し、記事の文脈に合わせたごく自然な「テキストリンク」を記事の途中に設置する、ただそれだけでした。
結果、遷移率は1.5%へと向上。実に15倍の改善です。この事例が教えてくれるのは、インフォグラフィックスは必ずしも派手なビジュアルである必要はない、ということです。最も重要なのは、ユーザーが求める情報を、求めるタイミングで「そっと差し出す」こと。見栄えよりも「文脈に沿った情報提供」こそが、人の心を動かすのです。
事例2:複雑な行動データから「黄金ルート」を発見したマイルストーン分析
あるECサイトでは、ユーザーのサイト内行動が複雑すぎて、どこを改善すればコンバージョンに繋がるのか、誰も分からない状態でした。よくあるページ遷移図を見ても、線が絡まり合ったスパゲッティのようで、本質が見えませんでした。
そこで私たちは、独自の「マイルストーン分析」という手法を開発しました。これは、購入までの道のりにおける重要な経由地(例:「カテゴリTOP」「商品詳細」「カート投入」など)だけをマイルストーンとして定義し、その遷移率だけを可視化する、極めてシンプルなインフォグラフィックスです。
複雑な情報をあえて削ぎ落とし、単純化したことで、チームの誰もが「どこで、どれくらいのユーザーが離脱しているのか」を一目で把握できるようになりました。そして、「どの順番で情報に触れたユーザーのCVRが最も高いか」というコンバージョンへの「黄金ルート」が浮かび上がってきたのです。この発見は、サイト改善だけでなく、広告のターゲティング精度を劇的に高めることにも繋がりました。

なぜ、あなたのインフォグラフィックスは「伝わらない」のか?よくある失敗とその教訓
一方で、良かれと思って作ったインフォグラフィックスが、誰にも響かず、お蔵入りになってしまうケースも後を絶ちません。20年のキャリアの中で、私自身も数多くの失敗を経験してきました。その経験から得た、特に重要な教訓を共有させてください。
失敗例1:「自己満足」の高度な分析レポート
かつて、あるクライアントに画期的な分析手法を導入したことがあります。私としては自信作でした。しかし、そのレポートの価値を理解し、使いこなせたのは、窓口の担当者ただ一人。他のメンバーや経営層には、その複雑なデータが何を意味するのか、全く伝わらなかったのです。
この苦い経験から、私は学びました。最高の分析が、常に最良の解決策とは限らない、と。データは、それを受け取る相手が理解し、行動に移せて初めて価値が生まれます。作り手の自己満足で、オーバースペックなものを提供していないか?常に自問自答することが、アナリストには不可欠です。
失敗例2:「目的不在」の美しいグラフ
「流行っているから」「かっこいいから」という理由でインフォグラフィックスを導入するのも、典型的な失敗パターンです。「何を知りたいのか」「何を解決したいのか」という目的が曖昧なままでは、データは美しく可視化されても、次のアクションには繋がりません。
それはまるで、行き先を決めずに航海に出るようなもの。どんなに立派な海図(インフォグラフィックス)があっても、どこにも辿り着けないのです。まず立てるべきは「ビジネス課題を解決するための問い」です。その問いへの答えを探すプロセスで初めて、データは意味を持ち始めます。

ビジネスを動かすインフォグラフィックス作成の5ステップ
では、どうすれば失敗を避け、ビジネスを動かすインフォグラフィックスを作れるのでしょうか。難しく考える必要はありません。これからお話しする5つのステップに沿って進めれば、あなたも「伝わる」インフォグラフィックスを作成できます。
- 【目的設定】すべての始まりは「問い」を立てることから
まず、「誰に」「何を伝えて」「どう動いてほしいのか」を具体的に定義します。これが全ての土台です。「経営層に、A事業の成長鈍化の真因を理解してもらい、B施策への投資判断を促す」といったレベルまで、具体的に言語化しましょう。 - 【データ収集・分析】数字の裏にある「物語」を探す
目的に沿って、必要なデータを集めます。しかし、ただ集めるだけでは不十分。ここでの主役は「なぜ?」という好奇心です。「なぜ、このセグメントの離脱率が高いのか?」「なぜ、このページの滞在時間は短いのか?」と問いを重ね、データから仮説という名の「物語の種」を見つけ出します。 - 【構成】最も伝えたいメッセージを絞り込む
いきなりデザインに着手してはいけません。まずは、伝えたい物語の「設計図」を描きます。最も伝えたい結論は何か?その根拠となるデータは何か?情報を整理し、階層化し、ストーリーとして構成します。ここで重要なのは「あれもこれも」と欲張らない勇気です。メッセージは一つに絞りましょう。 - 【デザイン】「伝える」ための最適な表現を選ぶ
ようやくデザインの工程です。しかし、ここでの目的はアートを作ることではありません。構成案で描いた物語を、最も効果的に伝えるためのビジュアル表現を選ぶ作業です。棒グラフ、円グラフ、散布図、フローチャート。それぞれの特性を理解し、メッセージに合った形式を選びます。Canvaのような無料ツールでも、素晴らしいインフォグラフィックスは作成できます。 - 【効果測定・改善】公開してからが本当のスタート
インフォグラフィックスは、作って終わりではありません。公開した後、それを見た人が意図通りに理解し、行動してくれたかを確認します。アンケートを取る、ヒアリングする、関連データの変化を追うなど、方法は様々です。フィードバックを得て改善を繰り返すことで、そのインフォグラフィックスはより強力なツールへと進化していきます。
まとめ:明日からできる、データと対話するための最初の一歩
ここまで、インフォグラフィックスの事例から、その本質、失敗の教訓、そして具体的な作成ステップまでお話ししてきました。データでビジネスを動かす、その可能性を感じていただけたなら、これほど嬉しいことはありません。
「でも、何から始めれば…」と感じているかもしれませんね。
でしたら、明日からできる、本当に簡単な最初の一歩を試してみませんか?
それは、あなたが普段見ているExcelの売上データや、Google Analyticsのアクセスデータで構いません。それを、いつもとは違うグラフ形式で表現してみるのです。ただそれだけで、今まで見えなかった傾向や、新しい「なぜ?」が生まれるかもしれません。それが、データと対話し、その裏にある物語を読み解くための、素晴らしいスタートになります。

もちろん、その一歩を踏み出す中で、「どのデータを見ればいいのか」「どう表現すれば、もっと伝わるだろうか」と、新たな壁にぶつかることもあるでしょう。もし、そんな時は一人で抱え込まないでください。
私たち株式会社サードパーティートラストは、そんなあなたの挑戦を、20年の経験をもってサポートします。あなたのビジネスの課題、データの悩み、ぜひ一度、私たちに聞かせていただけませんか。共にデータから物語を紡ぎ、ビジネスを前進させるお手伝いができることを、心から楽しみにしています。