SNS分析の「活用」でビジネスは変わるのか?〜20年データと向き合ったアナリストの答え〜
「SNSのフォロワーや『いいね』は増えた。でも、これが本当に売上に繋がっているのか、実感が湧かない…」
「競合はSNSで上手くやっているように見えるけど、一体何が違うんだろう?」
Web担当者の方とお話ししていると、こうした切実な悩みを本当によく耳にします。日々更新されるタイムライン、膨大な通知とデータ。その中で、確かな手応えを見つけるのは、決して簡単なことではありませんよね。
こんにちは。株式会社サードパーティートラストで、Webアナリストをしている者です。私はこの道20年、ECサイトからBtoB、大手メディアまで、あらゆる業界で「Webサイトの課題」と向き合ってきました。私たちの信条は、創業以来15年間、一貫して変わっていません。それは、「データは、人の内心が可視化されたものである」ということです。
この記事では、単なるSNS分析のテクニック解説に終始するつもりはありません。数字の向こう側にいる「人」の気持ちをどう読み解き、それをどうやって「ビジネスの成果」に結びつけていくのか。私たちが現場で培ってきた「SNS分析の活用術」について、あなたに直接語りかけるようにお話ししたいと思います。この記事を読み終える頃には、あなたのSNSへの向き合い方が、きっと変わっているはずです。
SNS分析とは、お客様の「心の声」に耳を澄ます技術
「SNS分析」と聞くと、なんだか複雑なツールや難しい指標を思い浮かべるかもしれません。しかし、本質はとてもシンプルです。例えるなら、SNSは「お客様の“本音”が飛び交う、巨大な広場」。その広場で交わされる会話に、じっと耳を澄ます技術こそがSNS分析なのです。

「この商品、こんな風に使ったらすごく便利だった!」「もっとこうだったら良いのに…」。こうした一つひとつの投稿は、単なるテキストではありません。それは、お客様の喜びや不満、期待といった「感情」が表れた、生きたデータです。
私たちが最も陥ってはいけないと考えているのが、「数値を眺めるだけ」で満足してしまうこと。フォロワーが何人増えたか、どの投稿の「いいね」が多かったか。それも一つの指標ですが、大切なのはその先にあります。「なぜ、この投稿に心が動いたのか?」「このコメントの裏には、どんな日常があるのか?」。そのストーリーを読み解くことこそ、真のSNS分析 活用の第一歩です。
私たちの役割は、その「心の声」を拾い上げ、翻訳し、「次に何をすべきか」という具体的なビジネスの羅針盤として、あなたにお渡しすることだと考えています。
SNSのデータを「物語」に変える、3つの視点
では、具体的にどうやってSNSのデータをビジネスの成果に繋げていくのか。ここでは、私たちが特に重要視している3つの「活用」の視点をご紹介します。これは単なる手法の紹介ではなく、お客様のインサイトを深く掘り下げるための、私たちの思考プロセスそのものです。
1. 顧客理解:「どんな人か」から「なぜ買うか」へ
SNS分析で顧客を理解しようとすると、つい「20代女性、都内在住、趣味はカフェ巡り…」といった属性情報(デモグラフィック)で満足してしまいがちです。しかし、それでは不十分。本当に知りたいのは、その人が「なぜ」あなたの商品やサービスを選ぶのか、という動機です。

以前、ある消費財メーカーのクライアント様と、SNSのUGC(ユーザー生成コンテンツ)を分析していた時のことです。行動データだけでは見えなかった、「時短はしたい。でも、家族のために手抜きはしたくない」という、働く母親たちの切実なインサイトを発見しました。この「罪悪感なき時短」というキーワードを元にコンテンツ戦略を切り替えた結果、エンゲージメントは劇的に改善しました。
Webの行動データだけでは「What(何をしたか)」しか分かりません。しかし、SNSの定性的な声と組み合わせることで、「Why(なぜそうしたか)」という、人の内心に迫ることができるのです。私たちは、この「Why」の発見こそが、ビジネスを動かす最大の力になると信じています。
2. 競合分析:「何をまねるか」から「どう差別化するか」へ
競合のSNSアカウントを見て、「あの投稿はバズっているから、うちも同じようなことをやってみよう」と考えてしまうことはありませんか?もちろん、成功事例から学ぶことは重要です。しかし、ただ模倣するだけでは、二番煎じで終わってしまいます。
私たちが競合分析で注目するのは、むしろ「競合が“やっていない”こと」や「競合のフォロワーが“満たされていない”こと」です。競合のコメント欄を丁寧に読み解くと、「もっとこういう情報が欲しい」「この点は不便だ」といった、貴重な不満が見つかることがあります。それこそが、あなたの会社が攻めるべきポジションのヒントになるのです。
競合という「鏡」に自社を映すことで、自分たちの強みや、提供すべき独自の価値が、より鮮明に見えてきます。SNS分析の活用とは、他社の動向に振り回されることではなく、自社の「勝ち筋」を見つけるための戦略的な分析なのです。

3. 効果測定:「何が良かったか」から「次は何を試すか」へ
キャンペーンが終わった後、「いいねがたくさん付いて良かったね」で終わっていませんか?それでは、せっかくの学びが次に活かされません。効果測定の目的は、過去を評価すること以上に、「未来の成功確率を上げること」にあります。
ここで私たちが徹底しているのが、ABテストにおける「大胆かつシンプルな問い」を立てることです。例えば、「画像のAパターンとBパターン、どちらが良いか?」といった些細な比較に終始するのではなく、「製品の機能性を訴求する投稿と、利用者の感情的なストーリーを語る投稿、どちらが人の心を動かすか?」といった、より本質的な問いを立てます。
多くの場合、検証は「よく分からなかった」という結果に終わります。それは問いが小さすぎるからです。大胆な差を持つ仮説をぶつけ合うことで、たとえ失敗したとしても、「この方向性は違う」という明確な学びが得られます。無数の選択肢の中から、進むべき道を一つずつ確かなものにしていく。これこそが、継続的に成果を出すための効果測定の在り方です。
もし、SNSの声に耳を傾けなかったら…
ここで少し、逆の視点から考えてみましょう。もし、SNS分析を「活用」しなかった場合、企業はどのようなリスク、あるいは「機会損失」を被るのでしょうか。
それは、まるで目の前にある「宝の地図」を読まずにいるようなものです。お客様が「こんな商品が欲しかったんだ!」とSNS上で発しているのに、その声に気づけない。競合がお客様の不満を拾い上げて次々とサービスを改善しているのに、自社だけが取り残されてしまう。

私が過去に経験した苦い失敗の一つに、クライアント社内の事情に忖度してしまい、データの示す「言うべきこと」を言えなかったことがあります。結果、本質的な改善は先送りされ、機会損失が膨らみ続けました。SNS上に溢れるお客様の声は、時に耳の痛いものかもしれません。しかし、その声から目を背けることは、ビジネス成長の最大のエンジンを自ら手放すことに等しいのです。
炎上リスクへの対応の遅れも深刻ですが、これも本質は同じです。炎上とは、企業が見過ごしてきた「お客様の不満の噴出」に他なりません。日頃からお客様の声に真摯に耳を傾けていれば、その兆候を早期に掴み、対話を通じて解決できるケースも少なくないのです。
SNS分析を「ビジネス成果」に繋げるために
ここまで読んでくださったあなたは、SNS分析が単なるデータ収集ではないことを、ご理解いただけたかと思います。
では、どうすればSNS分析を本当の意味で「活用」し、ビジネスの成果に繋げられるのでしょうか。私たちが20年間、様々な企業のデータと向き合い続けてたどり着いた答えは、やはり「目的」を明確にすること、この一点に尽きます。
あなたのビジネスにとって、今のSNSの目的は何でしょうか?「ブランドのファンを増やすこと」なのか、「見込み顧客のリストを獲得すること」なのか、それとも「顧客サポートの質を高めること」なのか。その「ビジネスの改善」という最終目的地によって、見るべきデータも、打つべき施策も、180度変わってきます。

もし、自社だけではその目的設定や分析に限界を感じたら、専門家の視点を借りるのも一つの有効な手段です。私たちのような第三者のアナリストは、社内のしがらみや固定観念に縛られず、客観的なデータに基づいて「今、本当に向き合うべき課題は何か」を提示することができます。
明日からできる、SNS分析活用の「最初の一歩」
さて、長い時間お付き合いいただき、ありがとうございました。最後に、この記事を閉じた後、あなたがすぐにでも取り組める「最初の一歩」をお伝えします。
それは、「直近1ヶ月で、自社のアカウントに寄せられたコメントやリプライを、一件一件、丁寧に読み返してみる」ことです。ツールを使う必要はありません。ただ、そこにどんな言葉が使われ、どんな感情が込められているのかを感じてみてください。
「ありがとう」「助かります」という感謝の言葉。「もっとこうしてほしい」という期待の声。あるいは、厳しい指摘。その一つひとつが、あなたのビジネスをより良くするための、お客様からの贈り物です。
もし、その声の読み解き方に迷ったり、そこから具体的なアクションプランに落とし込む方法が分からなくなったりした時は、いつでも私たち株式会社サードパーティートラストを頼ってください。私たちは、データからお客様の心を読み解き、あなたのビジネスを次のステージへと導くお手伝いをする、経験豊富なパートナーです。

まずは、お気軽にお問い合わせいただき、あなたが感じている課題や目標について、私たちに聞かせていただけませんか。一緒に、あなたのビジネスの「宝の地図」を広げられる日を楽しみにしています。