なぜあなたのデータ活用は進まないのか?分析基盤とBIツール運用の「落とし穴」と「成功の羅針盤」

「データはあるのに、どう活かせばいいか分からない」「毎月のレポート作成に、一体何時間も費やしているんだろう…」「高価なBIツール 導入したものの、結局一部の人しか使っておらず、宝の持ち腐れになっている」。

もし、あなたがこのような悩みを一つでも抱えているなら、この記事はきっとお役に立てるはずです。こんにちは、株式会社サードパーティートラストのアナリストです。私は20年間、ECからBtoBまで、あらゆる業界でウェブ解析に携わり、数々の事業をデータと共に立て直してきました。

長年の経験から断言できることがあります。データ活用が上手くいかない根本的な原因は、担当者の能力やツールの性能だけにあるのではありません。多くの場合、それはデータを「活かす」ための土台、つまり『データ分析基盤』が整っていないことに起因します。

この記事では、小手先のテクニックではなく、あなたのビジネスを根幹から変えるための「データ分析 基盤の構築」と「BIツールの本質的な運用」について、私の経験を交えながら、具体的にお話ししていきます。これは、単なるツールの解説書ではありません。データという羅針盤を手に、ビジネスの荒波を乗り越えるための、実践的な航海術です。

データ分析基盤は「キッチン」、BIツールは「お皿」

データ分析 基盤」と「BI ツール」。この二つの関係を、私はよく料理に例えてご説明します。

ハワイの風景

データ分析基盤は、いわばビジネスの「キッチン」です。社内のあちこちに散らばった顧客データ、売上データ、Webアクセスログといった様々な「食材」を集め、洗浄し、いつでも最高の料理が作れるように下ごしらえをして、冷蔵庫(データウェアハウス)に整理・保管しておく。このキッチンが整備されているかどうかが、料理の質とスピードを決定づけます。

一方のBIツールは、そのキッチンで作られた料理を、最も美味しそうに見せ、お客様に最高の体験をしてもらうための「お皿」や「盛り付け」の技術です。どんなに素晴らしい食材と腕利きのシェフがいても、料理が紙皿に無造作に乗せられて出てきたら、その価値は半減してしまいますよね。

逆もまた然りです。どんなに立派なお皿(BIツール)を用意しても、肝心のキッチン(分析基盤)が乱雑で、使える食材(データ)が古かったり、そもそも無かったりすれば、美味しい料理は決して作れません。「データ活用 課題」の多くは、このキッチン、つまり分析基盤の不在から始まっているのです。

失敗しない分析基盤構築、3つの心臓部

では、成果につながる「分析基盤 構築」は、どのように進めればよいのでしょうか。それはまるで、新しいレストランの厨房を設計するようなものです。闇雲に最新の調理器具を並べるのではなく、提供したい料理から逆算して設計することが何よりも重要です。

1. 心臓部①:すべては「問い」から始まる要件定義

私が最も重要視しているのが、この最初のステップです。どんなにリッチなダッシュボードを作っても、それを見て「だから、次に何をすべきか」が分からなければ、それはただの綺麗な絵に過ぎません。

ハワイの風景

大切なのは、「誰が、いつ、どんな意思決定をするために、その数字を見るのか?」という問いを徹底的に突き詰めることです。営業担当者が見る日報と、経営者が見る月次報告では、必要なデータの粒度も切り口も全く異なります。この「問い」こそが、分析基盤の設計図の核となります。

かつて私は、技術的に優れた分析手法をクライアントに提案したものの、現場の方々がその価値を理解しきれず、全く活用されなかった苦い経験があります。分析は、自己満足であってはならない。常に「使う人」の顔を思い浮かべることが、成功への第一歩です。

2. 心臓部②:目的に合わせたデータソースと保管庫の設計

「問い」が決まれば、次はその問いに答えるために必要な「食材(データ)」は何か、そしてそれをどこから調達し(データソース選定)、どう保管するか(DWH/データレイク設計)を考えます。

ここで陥りがちなのが、「とりあえず、あるデータは全部集めよう」という罠です。データは多ければ多いほど良い、というわけではありません。むしろ、関係のないデータはノイズとなり、本当に見るべきシグナルを見失わせる原因にもなります。目的というフィルターを通して、必要なデータを厳選する勇気も必要です。

3. 心臓部③:身の丈に合ったツール選定と運用体制

最後に、BIツールを選び、運用体制を整えます。Tableau、Power BI、Looker Studioなど、ツールにはそれぞれ特徴がありますが、いきなり最高級のオーブンを導入する必要はありません。最初は家庭用のコンロ、例えばGoogleスプレッドシートや安価なツールで小さく始め、「データを見て判断する」という文化を醸成することの方が、よほど重要です。

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そして忘れてはならないのが、誰がこのキッチンを清潔に保ち、食材の鮮度を管理するのか、という運用ルールです。データという企業の生命線を守るセキュリティ対策と合わせて、継続的に価値を生み出すための体制を構築しましょう。

「見る」で終わらせないBI運用:数字を「対話」のきっかけに変える

立派な分析基盤(キッチン)が完成し、BIツール(お皿)も導入できた。しかし、本当の挑戦はここからです。「BI 運用」で多くの企業が陥るのが、「レポートを見て、それで終わり」という状態です。

毎週の定例会議が、ただダッシュボードの数字を読み上げるだけで終わっていませんか?それでは、せっかくの料理をただ眺めているのと同じです。真のデータ活用とは、データを見て「問い」を生み出し、「対話」を始めることに他なりません。

「なぜ、この商品のCVRだけが先週から下がっているんだろう?」
「この広告経由のお客様は、他の経路と比べてリピート率が高い。何か特別な理由があるのでは?」
「このデータを見る限り、我々の仮説は間違っていたのかもしれない。次のアクションをどう変えるべきか?」

BIツールは、こうした「ビジネスを前進させる対話」を生み出すための、最高の起爆剤です。数字の増減に一喜一憂するのではなく、その裏側で起きているお客様の行動や心理の変化を読み解こうとすること。これこそが、私が信条とする「データは、人の内心が可視化されたものである」という哲学の実践なのです。

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そのためには、完璧なレポートである必要はありません。むしろ、少し不完全なくらいの方が「ここはどうなってるの?」という対話の余地が生まれます。大切なのは、分析の高度さではなく、それを見た人が行動に移せるかどうか、ただ一点です。

多くの企業がぶつかる「3つの壁」とその乗り越え方

データ活用の航海は、決して平穏なだけではありません。多くの企業が、いくつかの共通した壁、つまり「データ活用 課題」に直面します。しかし、ご安心ください。これらの壁は、正しいアプローチで必ず乗り越えられます。

壁①:データのサイロ化(組織の壁)

「営業部の持つ顧客情報」と「マーケティング部の持つWebサイトの行動履歴」が分断され、繋がっていない。これは典型的なデータのサイロ化です。しかし、これは技術の問題というより、部門間の連携不足や、時には縄張り意識といった「組織の壁」の問題であることがほとんどです。

これを乗り越えるには、トップダウンでデータ活用の重要性を共有し、部署横断のプロジェクトを立ち上げることが有効です。時には、私たちのような第三者が間に入ることで、部門間の利害調整がスムーズに進むことも少なくありません。

壁②:データの品質(信頼の壁)

「この数字、本当に合ってるの?」という疑念は、データ活用の文化を根付かせる上で最大の障害となります。入力ミス、重複データ、定義の揺らぎ…。データの信頼性がなければ、どんな分析も砂上の楼閣です。

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データの定義や管理ルールを定める「データガバナンス」を確立し、地道にデータを綺麗にしていく(クレンジング)作業が不可欠です。一見、地味な作業ですが、信頼できるデータという土台があってこそ、その上に立つ分析が輝きを放ちます。

壁③:人材不足(文化の壁)

「データ分析ができる専門家がいない」という悩みもよく耳にします。しかし、私は、いきなり外部からスター選手を連れてくる必要はないと考えています。

大切なのは、今いるメンバー一人ひとりが「自分の仕事に、データをどう活かせるだろう?」と考え始めるきっかけを作ることです。まずは使いやすいBI ツールを導入し、成功体験を小さく積み重ねていく。そうして、データを見て会話するのが当たり前、という文化を育むことが、最も確実な解決策だと信じています。

時には、ビジネスを本気で前に進めるために、組織のあり方そのものに踏み込むような、耳の痛い提案も必要になります。しかし、根本原因から目を逸らしていては、いつまで経っても事態は好転しません。これもまた、アナリストの重要な役割なのです。

明日からできる、データ活用の「最初の一歩」

ここまで、データ分析基盤の重要性から、構築、運用、そして課題解決まで、幅広くお話ししてきました。壮大な話に聞こえたかもしれませんが、心配はいりません。どんな偉大な航海も、はじめは港からの一歩、つまり「岸を離れる」決断から始まります。

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もしあなたが、自社のデータ活用を本気で変えたいと願うなら、ぜひ「明日からできる最初の一歩」を踏み出してみてください。

それは、あなたのチームで「一番知りたいけれど、今は分かっていない数字は何か?」を、たった一つでいいので話し合ってみることです。

「新規のお客様のうち、本当にリピートしてくれているのは何%なのか?」
「最も利益率の高い商品は、サイトのどこで紹介されているのか?」
「お客様が購入を諦めてしまうのは、どのページが多いのか?」

その「たった一つの問い」こそが、あなたの会社の分析基盤 構築に向けた、記念すべきスタート地点になります。その問いに答えるためには、どんなデータが必要で、どう見ればいいのか。そこから、すべての物語が動き出すのです。

もし、その航海図を一人で描くのが不安なら。あるいは、手にした羅針盤の使い方が分からなければ、いつでも私たち株式会社サードパーティートラストにご相談ください。20年間、データと共に数多のビジネスという船を目的地まで導いてきた経験豊富な水先案内人として、あなたの航海を、誠心誠意サポートさせていただきます。

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