データ収集 効率化は「作業」を減らし「思考」を増やす。ビジネスを動かすGTM活用論
こんにちは。株式会社サードパーティートラストでアナリストを務めております。20年以上にわたり、ECサイトからBtoB、メディアまで、様々な業界でデータと共に企業の課題解決に併走してきました。
もしあなたが、「データは重要だと分かっているのに、日々の収集作業に追われて肝心の分析や施策立案に時間が割けない…」と感じているなら、この記事はきっとお役に立てるはずです。その悩みは、決してあなただけのものではありません。多くの真面目なマーケターほど、非効率な「作業」の沼にはまり、本来割くべき「思考」の時間を失っているのです。
この記事では、単なるツールの使い方を解説するつもりはありません。Googleタグマネージャー(GTM)という強力な武器を手に、データ収集という「作業」から解放され、ビジネスを本質的に改善する「思考」の時間をいかにして生み出すか。そのための考え方と具体的なステップを、私の経験を交えながらお話しします。読み終える頃には、あなたの目の前にあるデータが、ただの数字の羅列ではなく、ビジネスを動かすための確かな羅針盤に見えてくるはずです。
なぜ今、データ収集の「効率化」がビジネスの死活問題なのか
データ収集の重要性は、もはや誰もが認めるところでしょう。しかし、その「やり方」が非効率なままだと、どうなるか。それは、お客様の声がひっきりなしに届いているのに、耳を塞いでいるのと同じ状態です。手作業でのデータ収集は、時間がかかるだけでなく、ヒューマンエラーという致命的なリスクを常に抱えています。
私たちが創業以来、一貫して掲げてきた信条は「データは、人の内心が可視化されたものである」というものです。クリック一つ、ページの滞在時間一つにも、ユーザーの興味や迷い、期待といった感情が映し出されています。非効率なデータ収集は、その貴重な内心の声を拾い損ね、大きな機会損失に繋がってしまうのです。

以前、あるクライアント企業では、データ収集を手作業で行うあまり、月次の分析レポートが出てくるのが翌月の中旬でした。競合が新しい施策を次々と打つ中で、彼らは1ヶ月前の古い地図を頼りに航海しているようなもの。これでは、ビジネスの舵取りがうまくいくはずがありません。
そこで登場するのが、Googleタグマネージャー(GTM)です。GTMは、この非効率な状況を劇的に改善し、データ収集のプロセスを自動化・効率化してくれる、いわば「優秀なデータの収集部隊」です。GTMを正しく活用することで、リアルタイムに近い顧客の行動を正確に捉え、迅速な意思決定を下す土台を築くことができるのです。
Googleタグマネージャー(GTM)とは?ビジネスを動かすための基本理解
「GTM」という言葉に、少し技術的な響きを感じて、身構えてしまう方もいらっしゃるかもしれません。しかし、その本質は非常にシンプルです。GTMは、Webサイトにおける様々なデータ計測タグ(センサーのようなもの)を、HTMLコードを直接編集することなく、一元管理できる無料のツールです。
これまでは、新しい広告タグを入れたい、特定のボタンのクリックを計測したい、と思うたびに、エンジニアに依頼し、実装を待つ必要がありました。しかしGTMがあれば、マーケター自身が管理画面上で、直感的にタグの設定や更新を行えるようになります。これは、マーケティング担当者とエンジニアの間にあった時間的・心理的な壁を取り払い、施策のスピードを劇的に向上させることを意味します。
GTMを理解する上で、最低限押さえておきたいのが「タグ」「トリガー」「変数」という3つの要素です。料理に例えるなら、このようなイメージでしょうか。

- タグ:「何を作るか」(Googleアナリティクスにデータを送る、広告のコンバージョン 計測する、など)という実行する処理そのものです。
- トリガー:「いつ作るか」(ページが表示された時、ボタンがクリックされた時、など)という、タグを実行するきっかけ(条件)です。
- 変数:「どんな材料を使うか」(クリックされたボタンのテキスト、表示されたページのURL、など)という、タグやトリガーで利用する具体的な情報(データ)です。
この3つを組み合わせることで、「どのページで」「何がクリックされたら」「その情報をGoogleアナリティクスに送る」といった、柔軟なデータ収集 設計が可能になります。まずはこの基本構造さえ理解すれば、GTM活用の第一歩はクリアしたも同然です。
【実践編】データ収集を劇的に効率化するGTM活用術
GTMの基本が分かったところで、いよいよ実践です。ここでは「タグ」「トリガー」「変数」をどのように活用すれば、データ収集の効率化と分析の高度化を実現できるのか、具体的なポイントを解説します。
効率化の第一歩:目的を絞った「タグ」設定
データ収集の基盤となるタグ設定。ここで多くの企業が陥りがちなのが、「あれもこれも計測したい」と、いきなり大量のタグを設置してしまうことです。しかし、目的の曖昧なデータは、分析のノイズになるだけです。
大切なのは、まず「ビジネス課題は何か」「その課題を解決するために、どんなデータが必要か」を明確にすること。例えば、「Webサイトからの問い合わせを増やしたい」という課題があるなら、まずは「問い合わせ完了ページ」への到達を計測するGoogleアナリティクスのタグと、広告効果を測るためのコンバージョンタグに絞るべきです。
私の経験上、「簡単な施策ほど正義」です。見栄えの良い複雑な分析よりも、まずは最も重要な指標を確実に計測するシンプルなタグ設定こそが、改善への最短距離となります。タグが増えてきたら、命名規則を統一し、フォルダ分けで整理する習慣をつけましょう。この地道な整理整頓が、将来の分析効率を大きく左右します。

収集を自動化する「トリガー」設定のコツ
トリガーは、データ収集の自動化を司る心臓部です。ここで精度を高めることが、分析の質に直結します。
例えば、「特定のボタンのクリック」を計測したい場合。「すべてのクリック」を対象にしてしまうと、不要なデータまで大量に収集してしまいます。GTMでは、「クリックされた要素が特定のIDを持つ場合」や「特定の文言を含むボタンの場合」といった、非常に細かい条件でトリガーを設定できます。
私がよくご提案するのは、「カスタムイベント」の活用です。これは、標準のトリガーだけでは捉えきれない、ビジネスに特化したユーザー 行動を計測する手法です。例えば、動画の再生率(25%, 50%, 75%)、特定のフォーム項目への入力、料金シミュレーションの実行など、ユーザーの「検討度合い」が分かる行動をトリガーとして設定します。
これにより、「動画を最後まで見たユーザーは、コンバージョン率が高い」といった、より深いインサイトを得ることが可能になります。ただし、設定したトリガーが意図通りに動作するか、GTMのプレビュー機能を使い、必ずテストすることが極めて重要です。この一手間を惜しむと、後で不正確なデータに振り回されることになります。
分析を高度化させる「変数」の活用術
変数、特に「カスタム変数」と「データレイヤー変数」を使いこなすことで、あなたの分析は新たな次元へと進化します。

変数を活用すれば、GAの標準レポートでは見えない、あなたのビジネスに固有の情報をデータに付与できます。例えば、ECサイトであれば、閲覧している商品の「カテゴリ」や「価格帯」、ログインユーザーの「会員ランク」などを変数として取得し、GAに送信するのです。
これにより、「高価格帯の商品をよく見るのは、ゴールドランクの会員である」といった、具体的な顧客セグメントごとの行動分析が可能になります。これは、パーソナライズされたコンテンツの提供や、広告のターゲティング精度向上に直接繋がります。
さらに強力なのが、サイトのソースコードに埋め込まれた構造化データ(データレイヤー)を変数として利用する方法です。これにはエンジニアの協力が必要になる場合もありますが、実現できれば、Webサイト上のあらゆる情報を、分析データとして活用できるようになります。まさに、Web解析の枠を超え、ユーザーの内心に迫るための強力な武器と言えるでしょう。
データ収集を効率化しない「未来」と、効率化した「未来」
ここで少し、想像してみてください。もし、データ収集の効率化を先延ばしにした場合、あなたのビジネスはどうなるでしょうか。
おそらく、貴重なリソースは非効率な手作業に奪われ続け、意思決定は遅れ、勘や経験に頼った施策が繰り返されるでしょう。データ入力のミスに気づかず、間違った分析結果に基づいて広告予算を投下してしまうかもしれません。これは、私が過去に見てきた、多くの企業が陥った「もったいない」状況そのものです。

一方で、GTMを活用し、データ収集を効率化した未来はどうでしょう。
あなたは、データ収集という「作業」から解放されます。企業全体の競争力を高めるための、未来への投資なのです。
株式会社サードパーティートラストがお手伝いできること
「GTMの可能性は分かったけれど、自社だけで導入・運用するのは不安だ…」
「何から手をつければ良いのか、具体的なロードマップが描けない…」
そう感じられたとしても、全く不思議ではありません。GTMは強力なツールですが、そのポテンシャルを最大限に引き出すには、やはり経験と知識が必要です。
私たち株式会社サードパーティートラストは、GTMの導入設定や運用代行はもちろんのこと、その先にある「データを使って、いかにビジネスを改善するか」という最も重要な部分で、あなたの会社の伴走者となります。私たちは、ただツールを導入するだけのベンダーではありません。

あなたの会社のビジネスモデル、組織体制、そしてメンバーのスキルレベルまで深く理解した上で、本当に「使える」データ環境を設計します。時には、組織間の連携など、サイトの枠を超えたご提案をすることもあるかもしれません。それは、数値の改善ではなく、ビジネスそのものの改善を目的としているからです。
明日からできる、最初の一歩
この記事を読んで、データ収集効率化への意欲が湧いてきたなら、ぜひ最初の一歩を踏み出してみましょう。
その一歩とは、「自社のビジネスにとって、今一番知りたいことは何か?」を一つだけ書き出してみることです。「新規顧客はどのページを最初に見る傾向があるのか?」「最も離脱率が高いフォーム項目はどこか?」何でも構いません。目的が一つ定まれば、それを計測するために必要なタグ、トリガー、変数が自ずと見えてきます。
もし、その最初の問いかけが難しい、あるいは社内の協力が得られず一歩が踏み出せないと感じたら、いつでも私たちにご相談ください。あなたの会社の「現実」を深く理解し、忖度なく、しかし実現可能なロードマップを描くのが、私たちプロの仕事です。
データ収集の効率化は、あなたのビジネスに眠る可能性を解き放つための鍵です。その鍵を開け、共に新しい景色を見る日を、心から楽しみにしています。
