顧客理解 英語」の壁を越える。データで海外顧客の「本音」を掴む方法

株式会社サードパーティートラストでアナリストを務めております。かれこれ20年、ウェブ解析という分野で様々な企業のビジネス改善をお手伝いしてきました。

さて、この記事にたどり着いたあなたは、「顧客理解 英語」というキーワードで検索されたのではないでしょうか。海外市場への展開、あるいは既に英語圏の顧客がいる中で、「どうすれば彼らのことを本当に理解できるのだろう?」という、深く、そして切実な課題を感じているのかもしれません。

「とりあえずウェブサイトを英語に翻訳したけれど、どうも反応が薄い…」「海外の顧客からのフィードバックが少なく、何を考えているのかわからない…」。そんな声を聞くたびに、私は非常にもったいないと感じます。なぜなら、その壁の向こうには、あなたのビジネスを飛躍させる大きなチャンスが眠っているからです。

この記事では、単なる言語の壁を越えるための小手先のテクニックではありません。私が20年の現場で培ってきた、データから海外顧客の「内心」を読み解き、ビジネスの成長に繋げるための本質的なアプローチについて、余すところなくお伝えします。これは、あなたと未来の顧客との間に、深く、確かな橋を架けるための設計図です。

なぜ「翻訳」だけでは失敗するのか? 地図なき航海のリスク

海外展開を目指す多くの企業が最初に陥る罠。それは、「自社の製品やサービスを、ただ英語に翻訳すれば売れるはずだ」という思い込みです。

ハワイの風景

しかし、これは羅針盤も海図も持たずに、未知の大海原へ漕ぎ出すようなもの。言語が通じることと、心が通じることは全くの別問題です。文化、価値観、商習慣、そして何より「何に価値を感じるか」というポイントが、国や地域によって大きく異なるからです。

以前、あるクライアントが鳴り物入りで海外市場に進出したものの、全く成果が出ずに頭を抱えていました。原因は明白でした。日本で成功したマーケティングのメッセージを、そのまま直訳して展開してしまっていたのです。現地のユーザーにとっては、その表現が何を意味するのか、なぜ自分たちに関係があるのかが全く伝わっていませんでした。

彼らが求めていたのは、洗練された広告コピーではなく、「自分たちの抱える、この問題を解決してくれる」という確信だったのです。「顧客理解 英語」の本質は、言葉を訳すことではなく、相手の文化や文脈を理解し、その心に響く「価値」を届けることにあります。

データを無視した進出は、大きな機会損失と無駄なコストを生むだけ。まずは相手を知ることから始めなければ、航海は始まりません。

データは「人の内心」の表れ。英語圏顧客を理解する分析アプローチ

「データは、人の内心が可視化されたものである」。これは、私たちが創業以来、一貫して掲げてきた信条です。ウェブサイト上のクリック、滞在時間、購入履歴…それら一つひとつの数字の裏には、必ずユーザーの感情や思考が隠されています。

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では、どうすれば英語圏の顧客の内心をデータから読み解けるのでしょうか。闇雲にツールを眺めていても答えは見つかりません。大切なのは、「問い」を立てることです。

1. 行動データ(Quantitative)から「なぜ?」の仮説を立てる

まずはGoogle Analytics 4 (GA4)のようなツールで、彼らの「行動」を観察します。例えば、

  • 特定の国のユーザーだけ、料金ページでの離脱率が異常に高いのはなぜか?(→価格表記?通貨?決済方法?)
  • ある製品紹介ページはよく見られているのに、購入に繋がらないのはなぜか?(→情報が不足?送料への懸念?)
  • 英語のブログ記事から、日本のユーザーは問い合わせをしてくれるのに、海外ユーザーは直帰してしまうのはなぜか?(→文化的に、記事から直接問い合わせる習慣がない?)

このように、データから「おや?」と思う違和感を見つけ、「なぜ、彼らはそう行動したのだろう?」という仮説を立てるのが第一歩です。ここでの分析は、複雑なレポートを作る必要はありません。まずは大きな傾向を掴むことが重要です。

2. 心理データ(Qualitative)で「答え合わせ」をする

仮説が立ったら、次はその「答え」を本人たちに直接聞きにいきます。行動の裏にある「なぜ」を明らかにするためです。

ここで強力な武器となるのが、私たちが独自に開発した経験もある「サイト内アンケート」です。例えば、先ほどの「料金ページで離脱するユーザー」に対してのみ、「もしよろしければ、購入に至らなかった理由を教えていただけますか?」というアンケートを表示するのです。

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すると、「送料が思ったより高かった」「自分の国で使える決済方法がなかった」といった、行動データだけでは決して分からなかった「本音」が手に入ります。この「行動」と「心理」のデータを掛け合わせることで、顧客理解の解像度は劇的に向上します。

ソーシャルリスニングでSNS上の生の声を拾ったり、英語のレビューサイト 分析したりするのも、この「答え合わせ」の一環です。

AIは「文化を知らない優秀なアシスタント」。その賢い使い方

近年、LLM(大規模言語モデル)の進化は目覚ましく、英語の顧客レビューや問い合わせメールの分析を劇的に効率化してくれました。膨大なテキストデータから「ポジティブ/ネガティブな意見」や「頻出する要望」を瞬時に要約してくれるのですから、使わない手はありません。

しかし、ここで一つ、絶対に忘れてはならないことがあります。それは、AIは「文化や文脈を知らない、極めて優秀なアシスタント」だということです。

例えば、アメリカのユーザーが書いた "This is sick!" というレビュー。AIは文脈なしに「病気だ」とネガティブに翻訳するかもしれません。しかし、スラングでは「これは最高だ!」という意味になります。このようなニュアンスの違いをAIはまだ完全には理解できません。

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私が過去に経験した失敗談ですが、AIの要約だけを鵜呑みにして、ある機能への不満が多いと判断し、改修の提案をしたことがあります。しかし後で原文をよく読んでみると、それは一部のヘビーユーザーからの特殊な要望であり、大多数のユーザーは満足していることが判明しました。AIの要約は「声の大きさ」を均してしまう危険性があるのです。

AIを使いこなすコツは、丸投げしないこと。AIに一次分析を任せて時間を短縮し、私たち人間は、その結果が「ビジネスの文脈や文化的な背景に照らして妥当か」を判断し、最終的な意思決定を行う。この役割分担こそが、AI時代の正しい顧客理解のアプローチだと考えています。

ツールは目的を達成する「手段」。高価な分析より一行のテキスト

「英語圏の顧客分析には、どんなツールがおすすめですか?」という質問もよくいただきます。世の中には素晴らしい分析 ツールや可視化ツールが溢れています。

しかし、私が20年間この仕事をしてきて痛感するのは、ツールはあくまで料理人でいう「包丁」であり、最も大切なのは「レシピ(=分析設計)」だということです。どんなに高価で切れる包丁を持っていても、何を作りたいかが決まっていなければ、宝の持ち腐れです。

かつて、あるメディアサイトで、記事からサービスサイトへの誘導バナーのクリック率が非常に低いという課題がありました。クライアントは「もっとリッチなデザインのバナーを作らなければ」と躍起になっていました。

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しかし、私たちはデータから別の仮説を立てました。「ユーザーは広告的なバナーを無意識に避けているのではないか?」。そこで提案したのは、見栄えのするバナーではなく、記事の文脈に合わせたごく自然な「テキストリンク」への変更でした。

結果、クリック率は15倍に跳ね上がりました。最も効果的だったのは、コストも時間もかからない、たった一行のテキストだったのです。

高価なツールを導入する前に、まずは「自分たちは何を知りたいのか」「そのために最も簡単で、早く、安く試せる方法は何か?」を考えること。この視点が、着実な成果を生むと私は信じています。

「顧客理解 英語」がもたらす、本当の価値

英語での顧客理解を深めることは、単に海外での売上が上がるといった直接的なメリットに留まりません。ビジネスそのものを、より強く、しなやかに変える力を持っています。

1. 商品開発の精度が上がる:
顧客の「本音」が分かることで、勘や思い込みに頼った開発がなくなります。データという明確な根拠に基づき、「次に作るべきもの」「改善すべきこと」にリソースを集中できます。

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2. マーケティングの無駄がなくなる:
誰に、何を、どう伝えれば響くのかが分かるため、的外れな広告に予算を投じる必要がなくなります。費用対効果は劇的に改善されるでしょう。

3. 強いブランドが育つ:
「私たちのことを本当に理解してくれている」。顧客にそう感じてもらえた時、単なる取引相手から、信頼できるパートナーへと関係性が深化します。これこそが、価格競争に巻き込まれない本質的なブランド価値です。

4. 組織が成長する:
海外顧客という「自分たちとは異なる視点」を受け入れることで、社内に新しい気づきが生まれます。それは、日本国内のビジネスを見直すきっかけにもなり得ます。

これらはすべて、私がクライアントと共に実際に体験してきたことです。顧客を深く知る努力は、必ずあなたのビジネスに何倍もの価値となって返ってきます。

明日からできる、顧客理解への「最初の一歩」

さて、ここまで読んでいただき、英語での顧客理解の重要性と、その具体的なアプローチについて感じていただけたのではないでしょうか。

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もしあなたが本気でこの課題に取り組みたいと考えるなら、壮大な計画を立てる前に、まずはごく簡単な「最初の一歩」から始めてみることをお勧めします。

それは、「自社の英語ウェブサイトやサービスについて、英語を母国語とする知人や友人に、正直な感想を聞いてみる」ことです。

「この表現、意味は通じる?」「どこか不自然なところはない?」「このサービス、あなたなら使ってみたいと思う?」

たったこれだけでも、あなたたちがこれまで気づかなかった、目から鱗が落ちるような発見がきっとあるはずです。データ分析のプロである私ですら、この「生の声」を聞くプロセスを何よりも大切にしています。

そして、そこで見つかった課題を、どうデータで裏付け、どう具体的な改善策に落とし込んでいくか。もしその段階で専門家の力が必要だと感じたら、ぜひ私たち株式会社サードパーティートラストにご相談ください。

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20年間、様々な企業のデータと向き合い、その裏にある顧客の心に寄り添ってきた経験が、あなたのビジネスを次のステージへ導くための、確かな羅針盤となれるはずです。あなたの挑戦を、心から応援しています。

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